sで終わる名詞の所有格は、その表記と発音が多少、複雑です。それで、ここでまとめることにしました。
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下は、「Practical English Usage」(Third Edition, Michael Swan, Oxford)からの抜粋です。()内は筆者の概訳/解説です。

439 possessives (1): noun + ‘s (forms)
(439 所有格(1):名詞+’s)

1 spelling
(1 綴り)

表記

singular noun + ‘s
(単数名詞は ‘s を付加)

my father’s car

plural noun + ‘
(複数名詞は ‘ だけを付加)

my parents’ house

irregular plural + ‘s
(不規則複数形の名詞は ‘s を付加)

the children’s room, men’s clothes, women’s rights, an old people’s home
(つまり、単数名詞の場合と同じ)

We sometimes just add an apostrophe ( ‘ ) to a singular noun ending in -s, especially in literary and classical references.
(単数名詞で、末尾が s で終わる名詞の場合、アポストロフィ(’)だけを付け、s を省くことがある。とくに、文学や古典の人名に多い。)

Socrates’ ideas (アポストロフィだけ)   Dickens’s novels (アポストロフィとs )

But ‘s is more common.
(文学や古典の人名以外の場合、’s のほうが普通。)

Mr Lewis’s dog

We can add ‘s or ‘ to a whole phrase.
(語句(複数の語の塊)は、’s または ‘ を付加することで所有格を作成できる。)

the man next door’s wife (the man next doorが語句)
Henry the Eighth’s six wives (Henry the Eighthが語句)
the Smiths’ new house (the Smiths=スミス家が語句)

Note the difference between, for example:
(下記の違いに注意)

Joe and Ann’s children (one lot of children: Joe and Ann are their parents)
(JoeとAnnの複数の子供、JoeとAnnが両親)

Joe’s and Ann’s children (two separate lots of children: Joe’s and Ann’s)
(Joeの複数の子供とAnnの複数の子供)

2 pronunciation (2 発音)

The ending’s is pronounced just like a plural ending (see 525).
(所有格の s の発音は、複数形のs の発音に準じる。)

doctor’s  /dɑ́ktə(r)z/ (ドクターズ) 
Madge’s  /mǽ(ː)ʤiz/ (マジィズ)
dog’s  /dɔ́(ː)gz/  (ドッグズ)     
Alice’s  /ǽlisiz/ (アリスィズ)
president’s  /préz(i)d(ə)nts/  (プレジデンツ)  
James’s  /ʤéimziz/   (ジェイズィズ)
Jack’s  /ʤǽks/ (ジャックス)

The apostrophe in a word like parents’ does not change the pronunciation at all. But with singular classical (ancient Greek and Roman) names ending in s’, we often pronounce a possessive’s even when it is not written.
(複数形の名詞の所有格(parents’ など)の発音は、複数形(parents)と同じ。つまり、「ペアレンツ」。ただし、古典(ギリシャやローマ)の人名のうちs’ で終わる人名の場合、アポストロフィの後にsがあるかのように発音することが多い。)

Socrates’  /sɑ́krətiːziz/ ideas (発音は、「ソクラティーズィズ・アイディアズ」)(注1)

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また、下は「ロイヤル英文法改訂新版」の解説の抜粋です。

(3) 固有名詞の所有格

① -sで終わるもの以外は原則に従うが,-sで終わる固有名詞の場合は次のようになる。

 ギリシャ・ローマなどの古典の人名(特に2音節以上の語に多い):’ だけをつける。

Socrates’ [sɑ́krətiːz] death(ソクラテスの死)
Achilles’ [əkíliːz] tendon (アキレス腱(けん))
* Venus,Zeus などは ‘ と ‘s の両方がある。

 ② ‘sをつけると発音しにくくなるような場合:ふつう ‘ だけをつける。

Moses’ [móuziz] prophecy(モーゼの予言)
* ‘s とすると発音上さらに [iz] がつくことになる。

③ 上の1、2以外のもの: 通例 ‘s と ‘ だけのどちらでもよい。

Columbus’s [kəlʌ́mbəsiz](またはColumbus’ [kəlʌ́mbəs])discovery
* (発音が)[s] で終わる語のときには ‘s [iz] をつけることが多い。

Dickens’s [díkinziz](またはDickens’ [díkinz])novels
* (発音が)[z] で終わる語のときには,綴り字では ‘ だけをつけ,話し言葉では [iz] と発音することが多い。

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紛らわしいのは、 sで終わる固有名詞(人名)の所有格で、それも表記と発音の2点に注意が必要です。

例えば、「Practical English Usage」では、「古典(ギリシャやローマ)の人名のうちs’ で終わる人名の場合、アポストロフィの後にsがあるかのように発音することが多い」とあります(上記の(注1)を参照)。一方、「ロイヤル英文法改訂新版」には、「Socrates’ [sɑ́krətiːz] death」と書かれており(所有格の発音は、「ソクラティーズ」)、説明に相違があります。

結論から言うと、Socrates’、Achilles’、Moses’ は例外として覚え(’ だけを付け、省略した s も発音しない)、そのほかの固有名詞は、「ロイヤル英文法改訂新版」の③の説明にしたがう(表記も発音も柔軟)のがいいようです。

以下、映画の場面から例をいくつか紹介します。

下は、「エレメンタリー」、シーズン2、ディスク3の1(ダブルフェイス)から。

1

この場面では、Travis’は、所有格のsがなくても「トラヴィスィズ」と発音されています。

 下は、「エレメンタリー」、シーズン2、ディスク6の1から。

2

Maddox’sは、「マドックスィズ」と発音されています。

 下は、「エレメンタリー」、シーズン2、ディスク5の2(女王陛下の暗殺者)。

3

発音は、「ホームズ」です(「ホームズィズ」ではありません)。

 

 以下、参考まで。

 life’sの発音は、「ライフス」です。

4

同様に、wife’sは「ワイフス」です。

 以上